協議会について

日本株式会社の福祉事業部、地方支店という発想

別の業界から来た私から見ると、福祉業界のお金の流れは新鮮でした。ご利用者に対して提供したサービスの実績を記録し、それを国保連に報告をして対価を得ます。主たる収入は直接利用者から受領するのではなく、行政機関から受給します。

これは民間企業で言えば、各支店から経理部門に実績を報告して、経理部門が一括して顧客からお金を回収しているようなものです。福祉の世界では、経理部門を国や行政機関が担当し、顧客へのサービス提供は地方に点在する福祉事業者が担当していることになります。

日本という国を一つの会社として捉えて、福祉を一事業部とし、一つ一つの福祉事業者は法人として独立していますが、支店として位置づけて考えてみます。

前編でお伝えしたように、福祉事業者は標準化されたサービスを提供し、ライバル関係になく、互いに情報共有をすることができる関係性です。これを踏まえると、ますます同じ会社に所属する地方支店として見た方がしっくりきます。

支店として捉えるならば、本社機能を持つ日本株式会社でお金を集めて配布する形は適切です。そして、顧客からの料金回収という経理部門の機能だけでなく、監査機能も行政が本社機能として提供しているのも納得です。

とすると、ICTを現場に普及させる役割を担う情報システム部門(以降、情シス)も、同様に本社機能に当たる行政機関の役割として提供されるべきでしょう。ところが、実態はICTに関してはその導入費用の補助、つまりは総務部門の役割ばかりで、ICTの選定や活用への支援といった情シスの役割は本社機能としては提供されていません。

このような思考実験の結果、全国の福祉事業者の情報システム部門にあたる本社機能を作ることが、ICT普及の鍵なのではないかと思い至ったのです。これが福祉の現場 ICT活用協議会 設立の最初の動機です。

協議会らしくない協議会を作る、プラットフォーム構想とは

情シスにあたる協議会を作るにあたって、協議会のあり方を再発明しました。

会員から会費を徴収し、事務局が中心となって情報を集めて配信したり、イベントを開催することがこれまでの一般的な協議会の形です。

インターネットが普及する前ならば、その活動の価値は大きかったと思います。しかし、インターネットの環境が整って、かつコロナ禍で集うことが難しい昨今、新しい協議会のスタイルが求められていると考えています。

本協議会では、会員同士が自発的に自律的に情報発信をしたり、助け合いを行うためのプラットフォームを提供します。会員と会員の間に協議会の事務局が入ることなく、ICTを活用したプラットフォーム上で、会員同士が直接つながるのです。

プラットフォーム提供という形態は特殊なものではありません。例えばfacebookがそうですね。誰もがすぐにユーザとしてサインアップできて、ユーザ同士がつながって情報交換を行います。基本的に、facebook社はユーザの行動に対して特段の口出しはせず、プラットフォームであるfacebookの機能を日々改善し続けています。

同じような発想で、福祉の現場の方々を利用ユーザとしたfacebookのようなプラットフォームを構築し、協議会はそのプラットフォームを改善することを役割とします。すでにこのプラットフォームは稼働しており、インターネットに繋がったブラウザさえあれば、誰でもすぐに参加することができます。

全国の法人が瞬時につながる、助け合える

現状、このプラットフォームをあまり色気がない名前ですが「会員サイト」と呼んでいます。会員サイトの価値は圧倒的なスピード感です。例えば、ある会員の方がスマホの導入について検討してらっしゃいました。スマホ導入にあたってキャリア(docomoさんとかauさんとか)をどのように選択したのか質問されました。

すると、またたく間に実践者のみぞ知る情報が飛び交いました。最終的には見積書まで共有されることもあります。これは業者から見れば冷や汗をかくような状態です。

一般的に業者に騙される原因は持っている情報量の差にあります。購入者から見れば、めったにない購入体験だけれども、業者は毎日のように行っている行為ですので、情報格差によって不信感を感じてしまうケースもあります。

日常生活でいえば、不動産の購入や引っ越し、結婚式、お葬式などでしょうか。騙されるというよりは、伝えられた価格や進め方が適正なものか購入者が判断できないのです。

ちなみにこの情報差を埋めることをビジネスにしているのがリクルート社です。彼らは出産や結婚、転職などのライフイベントにおいて、情報を届けるメディアを作って、業者との情報格差をなくすことで、消費者が損をしない仕組みを提供しています。

協議会も同じような構図を考えており、全国の事業者が各自の実践内容を共有することで業者との情報格差を解消します。適切な情報を持って業者と戦うことで、適正な価格での購買が可能となるはずです。

会員サイトでは、購買だけに限らず悩み事の相談もできます。

2020年3月頃になりますが、コロナウィルスの影響で面会中止をしている法人から、ご家族の不安を解消するための対策はないのかと投稿したところ、7県10法人からすぐに回答が集まりました。

会員サイトで平時からつながっておくことで、台風や大雨での天災、コロナのクラスター発生に伴う職員の不足など、非常事態の折に助けあえます。

そして、全国に同じ志を持った仲間がいると感じられるだけでも、モチベーションや安心感にもつながると考えています。

すべてをオンラインファーストで、展示会も自席から参加できる

2020年7月31日、恐らく福祉業界では初のICTに特化したオンライン展示会を開催しました。完全オンラインで開催しましたので、全国どこにいても自席から参加することができます。

オンライン展示会では地方に事業所があることがハンデにならず、等しく参加の機会を得ることができます。もちろん移動費や宿泊費も不要です。

もう一点、私達が大事にしているのは現場業務に従事する人も参加できることです。遠隔地の展示会への参加はシフト調整も大変ですので、一部の限られた方だけしか参加できません。オンライン展示会であれば、現場業務の合間をぬって施設から誰でも参加できるようになります。

協議会の活動は展示会以外もすべてオンラインファーストで行っていますので、距離も職位もハンデとならず、やる気さえあれば平等に活動に参画できるのです。

構想、サービス提供で役に立つ

今後は、共同購買や助成金の申請代行についてもサービスとして提供していけたらと考えています。

「直近でスマホを買おうと考えている方、いませんか?」と、オンラインのプラットフォーム上で募るだけで、全国の法人が場所を超えて共同購買が実現できるはずです。もっと高価な車の共同購買ならば、少数の法人が協力し合うだけで仕入れ価格を大きく下げられる可能性があります。

ICT活用の助成金は多く存在しますが、その申請にはノウハウが必要です。このノウハウを各法人ごとに学ぶのはとても非効率です。情報システム部門に当たる協議会が一手に申請を引き受ければ、法人は最低限の手間で助成金を申請できるはずです。そして何度も申請手続きをすればするほど協議会にはノウハウが蓄積されます。

オンライン展示会を全て自前で開催したおかげでかなりのノウハウが蓄積されました。コロナの収束が見えない今、オンラインでのイベントを開催したいと考えている団体は多いと思います。そんな方々にオンラインイベントの運営支援というサービスも提供予定です。

協議会の活動を単なる情報提供に留めず、きちんと対価をいただけるようなサービスを提供する組織にします。これは、過去に私が大手企業の中で営業の業務に携わっている際に、商売の感覚がない本部系部門とのやりとりにとても苦労した経験からきています。自分たちの業務が滞りなく回ることが優先され、現場、ひいてはお客様にとっての価値を考えてくれず、融通が効かないのでとても苦労しました。

協議会を現場と顧客視点を持たない組織にしたくありませんので、会員の声を聞きながら、サービスの創出と改善を続ける健全な組織として成長させたいと考えています。

協議会の運営を工夫する

協議会の会費は無料です。ではどうやって運営費をまかなうのでしょうか。

まずは徹底的にICTを活用して、低コストで運営できるよう工夫を重ねています。現在、会員数は100法人近くに達していますが、毎月の運営費は数千円程度です。今後、会員数が10倍に増えたとしても運営費はほぼ変わらない想定です。会費徴収がないことで経理事務が発生しないこともミソですね。

徹底的な低コスト運営をした上で、前述のようなサービス提供への対価をいただくことで運営費を稼ぎます。この形にすることで、会員の皆様に役立つために、協議会はサービスを改善し続けるモチベーションが生まれます。

なお、すべてのサービスを協議会の内部で実現しようとは考えていません。会員同士の関係をオープンにしているように、業務提携できるパートナーともプラットフォームを活用して、オープンに助け合っていく想定です。できる限り固定費がかからない組織を作ります。

自ら孫悟空の輪っかをはめる

協議会のための協議会にならないように、組織のガバナンスにも細心の注意を払いました。設立当初は目的に向かって邁進していた組織が、いつのまにか自分たちが存続すること自体が目的になって、視線が会員に向いていないケースは実は多いのではないでしょうか。

本協議会では、一般社団法人の設立に必要な設立時社員(株式会社でいえば創業メンバー)は、すべて福祉事業者の方々が担当してくれています。東京、宮城、三重、千葉、広島の法人に在籍する、協議会が任意団体だったころから積極的に関わっていただいた会員さまに快く引き受けていただきました。

ちなみに、すべてオンラインで実現している協議会の活動ですが、設立手続きには「はんこリレー」が必要で、全国に散らばった設立時社員の方の署名とはんこを集めるのは一苦労でしたが、それも楽しい経験となりました。

協議会のための協議会にしない最後の仕組みとして、定款29条と30条に想いを込めました。悪いことをしたら頭が締め付けられる孫悟空の輪っかを自分ではめたようなイメージです。

(存続期間)
第29条 この法人の存続期間は、令和7年3月31日までとする。
(解散) 
第30条
1.この法人は、存続期間の満了をもって解散する
2.解散を予定する事業年度において、社員は解散に関する決議事項を主とした臨時社員総会の開催を理事に求めることができる
3.臨時社員総会において、総社員の半数以上かつ総社員の議決権の4分の3以上に当たる社員が法人継続の採決をした場合は、解散を2年間延長する
4.本条の規定の変更の決議は、社員総会において、総社員の半数以上かつ総社員の議決権の4分の3以上に当たる多数をもって行われなければならない。

本協議会は、現場の方々で構成された社員が役に立たないと思ったら、5年後に自動的に解散する時限爆弾が仕掛けられています。社員として必要な決議は「解散すること」ではなく「継続すること」です。自分ではない誰かが作った組織を解散するのはとても勇気が必要なことです。なので、この協議会は放置していると自動的に解散する仕組みにしています。

5年後には社会情勢やICTを取り巻く環境も大きく変わっているはずです。その時に、設立当初に掲げた協議会のあり方が適切かどうかはわかりません。もちろん、変わらず必要とされているかもしれませんが、役に立たないならば消滅するという健全なプレッシャーを感じながら、協議会に関わるすべての人達が精力的に活動できたらと考えています。

展望、ワクワクと共に仲間を増やす

私としては、会員の方はもちろん、協議会に関わる人達が活動に参加することで、エネルギーをうけとれて元気になれるような組織にしたいと考えています。

先日開催したオンライン展示会も、出展者はチャットでやり取りしながら一体となって展示会を作り上げました。そのプロセスはまるで高校の文化祭のようでした。現場の方々に情報をお届けできたことはもちろんですが、同時に出展者同士が強固な信頼関係で結ばれましたことがとても嬉しかったです。もちろん、打ち上げの飲み会もオンラインで開催しました(笑)

何度もプラットフォームという言葉を用いてきましたが、私としては協議会はみんなの”欲しい”や”やりたい”が実現できるプラットフォームとして存在できるように願っています。声を上げれば助けてくれる人が現れる、共に取り組んでくれる仲間が見つかる。そんな場にできたら最高ですね。

苦労や課題が多い現代だからこそ、私たちに必要なのは希望です。悲観的な未来や数字を見せつけられ、焦燥感から突き動かされるのは疲れてしまいます。協議会の活動を皆でワクワクしながら取り組み、結果として社会に大きなインパクトを残したいです。

福祉事業者の方ならば協議会への参加はとても簡単です。下記のWebフォームからサインアップするだけで、全国の仲間とつながることができます。福祉事業者以外の方は別途お問い合わせ下さい。一緒に何ができるのか、共に頭を捻りたいと思います。

大人の課外活動として、楽しみながらも本気で取り組んでいます。皆様のご参画、ぜひお待ちしています。