宮城県仙台市を拠点に、「幸せな超高齢社会」をミッションに介護サービス事業を手掛ける株式会社グッドツリー。
同社が2012年にリリースした業務支援プラットフォーム「ケア樹」はクラウドのメリットを活かしたリーズナブルな価格設定とシンプルな操作性が評価され、今では全国で2,600を超える介護事業所が導入しています。
ケア樹が開発された背景には、東日本大震災で介護事業所が抱いた、ある課題感がありした。
ケア樹に込められた思いと、年々増していくICT化の必要性を4人の開発/運営メンバーに伺いました。
営業部 企画担当 山田 紗奈江さん
カスタマーサービス部 サポート課 阿部 隼人さん
営業部 井上 知紀さん
介護施設運営の支援を目的とした、クラウド型介護ソフト。
様々な業務帳票や計画書・記録・請求・分析業務などの一連の業務をICT化できる。
使いやすい操作性や充実したサポート体制により、現在全国2,600を超える介護事業所で活用されている。
「書類が流され…」震災での教訓から開発がスタート
ーグッドツリーがケア樹を開発したのは、東日本大震災での経験がきっかけとなったそうですね。詳しく教えていただけますか?
はい。2011年の東日本大震災の際に、とある介護事業所に保管されている書類やサーバーがすべて津波に流され、大きな損害を受けたという話を弊社代表の西原が聞いたことが大きな契機です。
当時は自治体によっては、「書類は必ず紙で保管しなければいけない」という決まりがあり、それが仇となってしまったのです。
そうした実情を知り、ペーパーレスへの転換や自社サーバーを必要としないクラウドサービスが必須になると、肌身を持って感じました。
そこから、クラウド型の業務支援プラットフォームの開発をスタートさせ、半年ほどかけて開発を行い2012年4月にリリースしました。
ー2011年当時はクラウドサービスが話題になり始めた時期ですよね。
そうですね。
Amazon Web Services(AWS)というクラウドサービスを使って開発していたのですが、日本で本格運用されて間もない頃でしたので、かなり早いタイミングだったと思います。
クラウド型サービスにすれば、サーバーを事業所に置かなくていいので、災害時のリスクも軽減できます。
それから、事業所の大きな悩みであるコストの部分でも、かなり安くできるのもクラウドのメリットです。
高価なサーバーも必要ないですし、保守運用費も抑えられます。
当時としては価格破壊と言ってもいいぐらい、リーズナブルな値段設定にしていて、それは今でもケア樹の強みになっています。
ー開発を進めるにあたって、工夫したことはありますか?
使いやすくて、シンプルな操作性はかなり試行錯誤しながら開発しています。
職員の方からのフィードバックもいただきながら、少しずつブラッシュアップをしていきました。
やはり、実際に使う職員の方に「使いづらい」と思われてしまっては価値がありません。
ケア樹は情報管理の煩雑さやリスクを減らすだけでなく、それまで紙に記入していた手間などを省くことで職員の業務支援も実現するサービスです。
そのために、使い勝手の良さはかなり意識して開発しています。
あとは、この業界特有の法改正への対応ですね。
3年ごとに法改正が行われるのですが、その度に請求方法や書類の形式が変わったりするので、それに合わせてソフトウェアもバージョンアップしなければいけません。
どう変わるかは行政が発信する情報をインターネットなどでつぶさに調べながら勉強していくしかありません。
阿部さんの机はプリントアウトした資料が山積みになっていますよね(笑)。
そうなんです(笑)。
勉強は全然ペーパーレスになりません。
量も多いですし、読み解くのが難しい内容も多いのですが、頑張って勉強しています。
中でも大川さんはかなり詳しくて、あの量の改正を毎回ソフトウェアに反映しているのはすごいと思います。
ー法改正への対応はどれくらいかかるものなのですか?
改正がある年は、年の4分の1くらいは関連する開発にリソースを割いています。
何よりも優先して取り組まなければいけませんので、スピード感を持ちつつもしっかりと勉強して対応できるようにしています。
ちょうど2021年の4月にも改正があり、なんとか今回も乗り切りました。
「人対人」を大切にするサポート体制
ー今は全国の事業所で導入されていますが、リリース以降どのように広まっていったのですか?
私は途中からマーケティングに関わり始めたのですが、最初は地元の宮城県の事業所を中心に、東北地方を中心に導入していただく事業所が増えていったと聞いています。
その後東京や大阪など少しずつ広がっていって、沖縄の石垣島にもユーザー様がいらっしゃいます。
我々も小さい会社ですので、全国的に営業を仕掛けていく、というよりはお客さまからの口コミでじわじわと広がっていった形です。
面白い特徴として、なぜか大阪の人たちの導入数が多いんです。
そうそう、それが不思議で(笑)。
ケア樹自体は大掛かりな広告展開などはしていないので、認知度は決して高くないのですが、そういうサービスでも興味を持って採用してくれる風土があるのかな、と個人的には思っています。
ーケア樹のどのような部分にメリットを感じて導入する事業所が多いのでしょう。
先程の話にもありますが、コストパフォーマンスに魅力を感じていただける事業所が多いです。
ケア樹は機能面も不必要なものは絞っており、特に中小規模の事業所との相性がいいサービスです。
中小規模の事業所からすれば、機能が豊富で高価なサービスは導入負担も高いですし、結局使わない機能ばかり、というケースにもなりがちですから。
ーサービスの紹介動画を拝見すると、サポート体制が高い評価を得ているようですね。
阿部さんの出番!
はい(笑)。
ケア樹は今でも必ず、人対人のサポートを行うようにしています。
電話なども基本的には自動音声案内は使わずに、できるだけ人が出て対応しているんです。
こちらの手が空いていないときでも、ひとまず電話に出て「後で折り返します」と伝えるようにしています。
自動音声は操作をしなければいけなかったり、案内に時間がかかったりするので、職員のストレスになりやすいです。
それに、職員のみなさんは毎日人対人のお仕事をされている方々ですから、こちらも人対人の対応を大切にしていきたいんです。
「頼りになるサポート」について語るケア樹の活用事例(グッドツリー制作の動画)
ケア樹が多くの事業所にご利用いただいているのも、そうしたサポート対応での評価が大きいと思います。
電話を通じてでも、真摯に対応する姿勢は相手に伝わりますから。
ーすばらしいですね。介護業界のICT化に長く携わっているかと思いますが、現状をどう考えていますか?
お客さまに相談をいただく際に大きく2つのパターンがあります。
1つは、ICT化はある程度進んでいるが、その中でコストパフォーマンスをよりよくしていきたいという相談。
もう1つが、まだICT化に着手できていないからこれから進めていきたい、というパターンです。
ですので、業界全体としては、まだまだICT化の途上段階であると日々感じています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が広まり、意識は高まってきていると思います。
しかし、何のためのDXなのか、何のためのICT化なのかをしっかり考えるのも大切です。
ケア樹の場合は、情報管理のリスクを減らすこと、そして職員のみなさんの業務を支援すること。
その先にあるのは、高齢者のためのよりよい介護です。
ケア樹も含め、何のためにICTツールやサービスを導入するか、事前にしっかり考えることが大切ですね。
「職員を支援できているか」という初志を貫徹する
ーありがとうございます。最後にみなさんのこれからの展望を教えてください。
今意識しているのは、「初志貫徹」です。
ケア樹がしっかりと職員を“支援”できるサービスになっているか、開発当初の思いを今一度見直しつつ、これからも続けていきたいですね。
事業所で働く方々の現実的な課題は、まだまだ数多くあります。
フィードバックをいただきながら、業務支援するにはどういうサービスであればいいかを常に考え、アップデートし続けたいと思います。
ここ数年、行政側で介護業界も含め、社会全体的にICT化を進める動きが活発化してきています。
どういう変化が起きているのか、引き続き情報収集しながら、適切なサポートができるように努めていきたいです。
お客さまは介護現場で働きながら、そうした変化に対応しなければいけませんから。
我々が、お客さまよりも多くの知識を、率先して持っていなければいけない、ぐらいの意気込みで頑張りたいです。
営業をしている身としては、導入しておしまい、ではなくしっかりと事業所の経営にも貢献できているかという視点を持ちたいと考えています。
ですので、今後は経営も勉強して、コンサルティングまでできるようになっていきたいです。
ソフトは導入したけど、その先どうすればいいかわからない、というお客さまも少なくありません。
そうした方々に、経営的な視点でのアドバイスをできるような人間になって、より意味のあるICT化を実現していきたいです。
私は事例記事を作るために、お客さまの声を聞きにいく機会が多くあります。
手前味噌ですが、お客さまの声を聞く度に、ケア樹はみなさんのお役に立てているんだといつも実感しています。
ただ、一方でそうした声をあまり外に発信できていないという課題も感じています。
ケア樹を通じて、お客さまがどのようにICT化を進めているのか、職員の業務を支援することで、どのように質の高い介護を実現しているのか。
こうした声をしっかりと外にも届けて、ケア樹の良さはもちろん、ICTの知見を業界全体に広めていきたいな、と考えています。
株式会社グッドツリー
ケア樹製品ページ
https://caretree.jp/product/