「福祉の現場 ICT活用協議会」の代表理事を務める藤原士朗と理事を務める岡部拓哉。
どんな思いで同協議会を運営しているのか、どういうキャリアを進んできたの…など、2人の“人となり”を知るためにいろいろなことを聞いてみました。
「理事」という堅い肩書きからはイメージできない、人間味溢れる2人の対話をお届けします。
福祉業界の課題、IT業界の悪しき習慣を解消するために
まずは、「福祉の現場 ICT活用協議会」(以降、協議会)を立ち上げた経緯から教えてください。
いろいろな福祉事業者の方と話をしていると、ケアコラボのことだけでなく、他のグループウェアツールやインカムのことなどを聞かれることが多かったんですね。
正直、以前は他のツールに関してはそこまで詳しくなかったのですが、できる限り自分なりに調べて返答をしたりしていました。
なるほど。それが協議会に繋がっていくわけですね。
多くのベンダーが、売り切り型のソフトウェアで「売ったらおしまい。あとのサポートは有料」というビジネスモデルをしていることに、歯がゆさを感じていたのです。
福祉施設でICT化を進めるには、ただツールを買うだけでなく、その後の導入定着のフォローが必須です。
つまり、使い始めてからが、本当のスタートなのです。
しかし、定着まではタッチしない、あるいはサポート料のような形で別途料金を請求するベンダーも多く、それでは福祉業界のICT化が進むわけない、と憤りに近い思いを感じていました。
このビジネスモデルでは、藤原さんが言ったような買い切り型のソフトウェアの弊害は起きません。
他にも、福祉業界向けのSaaSツールは増えてきていますが、情報がまだ行き届いておらず、むやみに高額な買い切り型ソフトウェアを売ろうとするケースはまだまだあります。
そのためには、もっと活発に情報交換が行われ、オープンにソフトウェアの使い勝手やベンダーについての評価を議論できる場が必要だ。
そういう思いから、この協議会を立ち上げました。
福祉業界の人が主役となる場
ケアコラボとしての事業ではなく、一般社団法人という形を取ったのはなぜでしょうか?
我々は福祉業界のみなさんが情報を得たり、コミュニケーションを取れる場を提供する役目です。
つまり、この協議会はICTを普及させるための、福祉事業者にとっての「情報システム部門」のような役割を担っているのです。
会費が必要ないというのも珍しいですよね。
しかし、この協議会は会員同士が自発的・自律的に助け合い、情報共有しあうことを目指しています。
一般的な協議会らしさはないかもしれませんが、私たちの目指すことをどう実現すればいいか考え抜いた結果、今の形になっています。
オンライン展示会も面白い取り組みですね。
情報が足りないというのがそもそもの課題感としてもあったので、オンライン展示会という形で、どんなツールがあるのか、導入のポイントは何か、などを語っていただいています。
ベンダー側の話だけではなく、実際に導入している施設の方と話をしたり、直接質問を受け付けたりと、双方向的なコミュニケーションが生まれる展示会を心がけています。
目の前にいる人の役に立ちたい
2人はどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか?
じゃあIT分野が得意だったかというとそうでもありません。新卒で入った会社で、営業職として働いていたのですが、パソコンは苦手なほうでした。
EXCELで、簡単な計算もできないような人間でしたから(笑)。
そうだったんですね。
そこから、ITに関わるようになって、独学でいろいろと学んでいきました。
ですから、ICTについて1から学んでいくときの難しさとか、大変さは身を持って体験しているんです。
それから、さっき藤原さんが話したようなソフトウェア開発の問題点も、開発会社に依頼する側としていろいろと感じていました。
外注先の対応がいまいちで、自分が作ったほうが早いんじゃないかとプログラミングの勉強までしたんですよ。
本当に、ユーザーにためのシステムになっているかが疑問だったんです。
すごい。納得がいくまでとことんやるタイプなんですね。
そのソフトウェアを使う人に、本当の価値を届けるにはどうすればいいか。システム開発のプロジェクトを通して、改めてそうした自分の考えも整理できました。
その後、自分のキャリアをいろいろと考えて転職活動をしはじめたとき、ケアコラボの開発を手掛けるソニックガーデンに魅力を感じて応募したんですね。
結果、これまでの自分のキャリアを活かせるのではとケアコラボ社に入社し、協議会立ち上げまで至った、という流れです。
福祉業界については、キャリアの途中から勉強していったのですね。
あと、いろんなITツールとかを触るのは好きにだったんですよ。新しいもの好きというか。
そうした自分の特性がバッチリハマる場を見つけられたな、と思っています。
場作りが好きでもあり、得意でもある
藤原さんはずっとIT業界にいたわけですが、その中でもSNSサービスに強いと伺っています。会員サイトもまさにそうしたサービスですよね。
そのツールの運用には、今も関わっています。
いわゆる場を作って、そこにいる人たちに何かしらの価値を提供するという仕事をずっと続けていました。
この経験が協議会の会員サイトを生むきっかけにもなっています。
ICT化への課題は、法人ごとで違うので、私たちが一律の「答え」を提供することはできません。
ですから、私たちが「場」を作り、当事者同士で知見のシェアが活発に起きるよう手助けをする。
これが、福祉業界のICT化にとって一番必要なことなんじゃないかと思っています。
場作りが得意なんですね。
飲み屋に、同期数人で集まって悩みとか課題感を共有して、「こうするといいんじゃない?」とか「がんばろうよ」って支え合う機会を作っていたんです。
私は、何かをやる前から「自分には向いてない」と避けるのが嫌いなんです。
ついつい、そうやって新しいことから逃げがちですけど、向いてるか向いてないかなんてやってみないとわからないんですよね。
一方で、新しいことにチャレンジするには、仲間の存在、勇気を与えてくれる存在も必要です。
そうした支え合う場があって、いろいろなことにチャレンジして、それではじめて「向いているか、向いていないか」がわかるんです。
この協議会もそうした場となるように、がんばっていきたいですね。
さらなるICT化にむけて、仲間を募集中
ありがとうございます。2人の人となりがすごく理解できました。最後に、それぞれの展望を教えてください。
リモートワークが普及して、オンライン研修も当たり前になってきたのも大きいと思います。
まずは研修の質をどんどん磨いていって、必要な知識や情報を伝える活動は続けていきたいです。
こうしたコンテンツもどんどん増やしていって、協議会のサイトを「日本一福祉業界のICT化に詳しいサイト」に育てていきたいですね。
この壁を乗り越えるには、福祉業界の中で“プロジェクトマネジメント”ができる人材を増やしていかないといけない、と最近よく考えるんです。
ただ、そうした経験は福祉の現場においてはなかなかできないんですよね。
そうした点でのノウハウや知恵の提供は今後強化していきたいと考えています。
そのために、協議会に協力してくれる仲間も募集しています。
もちろん、会員もどんどん増やして、会員サイトをより有意義なものにしていきたいです。興味のある方は、ぜひお問い合わせいただけるとうれしいです。