ICT化の取り組み

イベントレポート「ICT活用における現場とベンダーの役割」

2021年10月27日、福祉業界向けにICT活用のヒントを得る場として開催された「第四回 福祉×ICTのオンライン展示会」。
このイベントの中で、ベンダースタッフと福祉現場のICT担当者が対談する「ICT活用における現場とベンダーの役割」が行われました。
それぞれ違う立場の2人が、率直な意見を交わし、導入や活用のポイントが多く語られたこの対談。
ICT担当者は、ベンダーとどのような関係性を築いていけばいいのでしょうか…?

ベンダーは現場に寄り添えない

こんにちは、司会進行を担当いたします、ICT活用協議会の岡部と申します。本日のテーマは、「ICT活用における現場とベンダーの役割」です。
私自身、ケア記録システム「ケアコラボ」でベンターの立場で営業を経験しており、導入・活用が
うまくいく法人、いかない法人も多く見てきました。
今日は、2人の登壇者も交えながら、いろいろ議論ができればと思います。
では、登壇者のご紹介をします。

1人目は、上青木中央医院医療連携室の清水信貴さんです。
清水さんは、第一回目の対談にも登壇していただき、非常に示唆に富んだ発言をたくさんしていただきました。
本日もよろしくお願いします。

イベントレポート「福祉の現場発! ICT推進の工夫と苦労」2021年7月30日、福祉業界向けにICT活用のヒントを得る場として開催された「福祉×ICTのオンライン展示会」。 同イベントで、一際...
清水さん
清水さん
よろしくお願いします。私は長くソーシャルワーカーとして、現場一筋で働いてきた人間です。
院内のICT担当も担っており、自分の経験が少しでも役に立てれば幸いです。

2人目はケアコラボ社でカスタマーサクセスを務める赤沼紗織さんです。

赤沼さん
赤沼さん
よろしくお願いいたします。
ケアコラボのカスタマーサクセスとして、ご興味を持っていただいたお客様が、しっかりと導入していただけるようにサポートを行っています。
ケアコラボ社に入社する前はソーシャルワーカーとしても働いていました。
今日はベンダー側の人間として、いろいろお話できればと思います。
前回の対談も拝見して、今日は清水さんとお話できるのをすごく楽しみにしていました。
清水さん
清水さん
ええ!とんでもない(笑)。こちらこそ、よろしくお願いします。

お二人とも埼玉県でソーシャルワーカーをしていたという、共通点もありますね。
今回、このテーマを設定したのは、第一回目で清水さんが発した「ベンダーは現場に寄り添えない」という言葉がきっかけとなっています。
これ、私自身導入相談を経験するなかでものすごく実感していたことなんです。

清水さん
清水さん
はっきりと言い過ぎましたかね…。

いえ(笑)。これは、本当にそのとおりだと思うんです。
過去の経験から率直に申し上げると、導入がうまくいく法人ほど、ベンダー側の手がかからないんです。
つまり、ベンダーにICT活用を任せようとするとうまくいかないケースが多い。

なぜか、と考えてみたのですが、まずひとつにベンダーはそもそも外部の人間なので、信頼関係のないところからスタートします。
それよりも、信頼関係がすでにできている内部の方が推進するほうが絶対にいいですよね。

そして、ICTの活用は継続性がキモとなります。ずっとベンダーが付きっきりでサポートできるわけではありません。
清水さんもkintoneを今でもずっと、細かく改修しながら使い続けていらっしゃいますが、そうした細かな取り組みはベンダーには無理なんです。

ですので、担当者と現場の関係性がものすごく重要になってくる、というのが本当に最近考えていることです。
清水さんはまさにICT推進の担当者をずっと務めているわけですが、この関係性について、どう捉えていますでしょうか?

清水さん
清水さん
基本的に、現場の人は何も変えたくないですよね。

ああ、なるほど…(笑)。

清水さん
清水さん
ICTに関する課題を感じている人と、感じていない人にはギャップがあって、それを埋めなきゃいけないんです。
ベンダーと現場の間にいるICT担当者は“課題を感じている人”です。
ただ、現場は感じていないことの方が多い。ですので、ICT担当者が現場に課題なんだよと認識してもらうところからはじめないといけません。

そうですね。課題だと感じていないと、ツールを使おうともしませんもんね。

清水さん
清水さん
はい。だから、何よりもICT担当者と現場との信頼関係の構築が重要になってきます。
「あ、この人が言うのであれば信用できるな」という感覚が、現場の中に生まれていることが大事です。

そもそも担当者が課題を感じるのは、現場の方からの意見を聞いたときですか?それとも、経営側から何か言われてからですか?

清水さん
清水さん
私の場合は、現場の方とお話をしてその課題を経営側に伝えることがほとんどです。でないと、私のわがままになってしまうので。
現場と一緒になって、課題を見つけていくことが大切です。まぁ、それがなかなか難しいんですけどね(笑)。

ICT化の鍵を握る“課題認識”

赤沼さんは今の話を聞いていかがですか?

赤沼さん
赤沼さん
担当者の方が課題を認識しているかどうか、は導入がうまくいくかどうかにすごく影響しますね。
課題がはっきりしていない方だと、話を進めていくうちに混沌としてしまうことがよくあります。
課題があって、現場の方も認識していて、その課題を解消するためにケアコラボをどう使えるか、という話までできれば導入がうまくいく可能性は高いですね。
清水さん
清水さん
さっき、難しいと言いましたが、すごく感じるのは「課題を課題と気づけない」ということです。

ベンダーに相談はしたものの、どこに課題があるかがはっきりとしていない。
でも、ベンダーは客観的に見てもしかしたら課題に気づけるかもしれないんですよね。
だから、ベンダーにはぜひ課題の掘り起こしをしてくれるとありがたいと思います。

赤沼さん
赤沼さん
ああ、なるほど。
清水さん
清水さん
担当者も、自分では気づけない課題があるはずなんです。
例えば、ゴミ屋敷に住んでいる人って、それが課題だとは認識していないんですよね。
それを、外部の人の働きかけがきっかけでが気づくこともあるかもしれない。
赤沼さん
赤沼さん
本当にそうですね。導入相談の仕事をはじめたころは、私もそこがわかっていないところがありました。
明確な課題があって、相談にきているものだと思っていたんです。
でも、必ずしもそうでないことに気づいて、まずはお客様の話をしっかり聞くことが大事だと、ヒアリングの時間をすごく長く取るようにしました。

ケアコラボがどういうツールかを説明したうえで、介護記録にどういう課題を感じているか、今後の展望はどうか、などをじっくり聞くようにしています。

そこで、気づいてない課題が出てくることもありますよね。

赤沼さん
赤沼さん
そうですね。ヒアリングをしたときに、例えば「介護記録以外に、申し送りのノートが5冊もあるね」という、「言われてみれば」みたいなポイントに気づいていただくことはありますね。

ベンダーに求められるコミュニケーションとは?

日々、営業を受ける側の清水さんにも聞きたいのですが、ベンダーによって色はありますか? しっかりお客様の話を聞くところ、商品の話ばかりするところ…。

清水さん
清水さん
それはもう、明確にありますよ(笑)。
福祉業界の前提知識がない人だと、パンフレットだけ渡しておしまい、なんてこともあります。
それだと、私も現場にどう説明していいかわからないですよね。

ああ、なるほど。担当者はせっかく話を聞いたのであれば、現場にも説明したいと思うはずですが、そこをサポートするツールなどがあるといいのかもしれないですね。

清水さん
清水さん
私から現場に変な説明をすると、そこで信頼関係が揺らぐんですよね。「この人、何かわからないこと言ってる…」と。うかつな説明はできないんですよ。

ベンダーの方はひやっとしてますね。

清水さん
清水さん
言い過ぎだったら止めてくださいね(笑)。

いえいえ。でも、「営業されすぎたので、資料請求したくない」と協議会の会員さんからも声を聞いたことがあります。売ろうとしすぎても売れない。

清水さん
清水さん
課題を共有できるかどうかは大きいですよね。
ベンダーと、「あ、それが課題ですね」と言えるかどうか。そこまで言えれば、私も現場の人に話しやすいので。

同じ目標が持てるといいのかもしれませんね。

赤沼さん
赤沼さん
私も、こちらから一方的に押し付けるようなコミュニケーションはしないように心がけています。
「その課題に対しては、ケアコラボのこの機能を使って…」という話ができるようにはしています。最近、やっとできてきたところではありますが(笑)。
清水さん
清水さん
導入後にも伴走する姿勢を見せてくれるとうれしいですよね。
現場からはいろんな意見が出てくるんですよ。それをベンダーにも、気軽に相談できるといいですよね。

相談先になる、というのは大切ですよね。ベンダーとしては、導入して終わりではなく、長く使っていただくところまで考えないといけませんよね。

ICT担当者が楽しくしていれば、仲間が増える

一方で、最近考えるのは、担当者の方がプロジェクトマネジメントのスキルを持つことも必要なのかな、と感じています。
時々、「導入後も全部やってくれるんですよね」と言われることもあって、できることできないことをベンダー側も判断しないといけない局面もあります。

赤沼さん
赤沼さん
担当者の方が、1人きりでがんばられているケースがすごく多いですよね。
そこが、最終的に導入に至らない理由として多いと感じています。
ですので、まずは1人でも2人でもいいので現場に仲間を作ってくださいということはよく言います。
記録システムの導入を検討するチームをまずは作って、そのうえでケアコラボを使いたいということであれば全力でサポートしますよ、というコミュニケーションも多いですね。

孤軍奮闘していると、心が折れてしまうので、いかにみんなで考えられる状態を作っていくかは大切だと思います。

清水さん
清水さん
仲間づくりは必要ですね。自分の負担を減らすのと、属人性をなくすといういう意味もあります。
じゃあ、どう増やすのという話にもなりますけど、そこで私が大切にしているのが、“自分自身が楽しく取り組む”ことです。
普段から楽しそうにしていれば、周りの人も「自分もやってみようかな…」と思ってもらえるかもしれないですよね。
苦しそうにやっていたら、近寄りづらいですから。
そうやって、少しずつRPGゲームみたいに仲間を増やしていくのが大切なのかな、と思いますね。
赤沼さん
赤沼さん
そうですね、最初から2人、3人とチームで面談に参加していただいている法人などは、うまくいくケースが多いですね。
中間管理職の方が1人で面談に来られて、悩まれている場合は「若い人に意見を聞いてみるのはどうですか?」と、チームづくりを促すこともあります。
清水さん
清水さん
それから、経営層の働きかけも大事ですよね。
経営層がICTへの意識が強いと、チームを組んでくれるんですよ。経営層の意識が低いと、「1人でやって」となりがちです。
赤沼さん
赤沼さん
経営層の方にプレゼンをお願いします、と依頼されるケースもあります。
清水さん
清水さん
ありますよね。経営層と現場のニーズって全然違うので。
赤沼さん
赤沼さん
全然違います…。
清水さん
清水さん
その使い分けは難しいですよね。

現場からベンダーには問い合わせしづらい?

スモールステップ、小さなチームではじめてみましょうというのはよく言っています。スモールステップを実践するうえでのポイントはありますか?

赤沼さん
赤沼さん
ケアコラボでは、お申し込みをいただいてから2ヶ月が準備期間として考えています。
その期間内では、例えば3人ぐらいの方がまずは使っていただいて、使い方などに詳しくなってもらい、その後少しずつ使える人を増やすようにアドバイスをしています。
その準備期間の半分となる1ヶ月後に、面談を入れてフォローすることも心がけています。

その1ヶ月目の面談時に、長く利用していただけそうかどうかも、肌感覚ではありますがわかったりしますね。

清水さん
清水さん
すごいわかります。現場で、導入して初期のころに「使いづらい、紙でいいや」となっちゃうと長続きはしないですよね。
常に、“紙への引力”が働いているので(笑)。

それで現場の業務は回っちゃっていますもんね。最初の1ヶ月目がすごく重要というのは私もすごく大事だと考えています。

清水さん
清水さん
うまくいかないことがあっても、現場からベンダーには問い合わせしづらいんですよね。
お金取られるんじゃないか、とかこんなこと聞いていいのかな、とかいろいろ考えてしまうので。
ベンダーの方からフォロー面談をしてくれるのはありがたいですね。

なるほど。ちょうどいい質問をいただいています。
「ベンダーに(初めて)問い合わせをするときは目的があると思いますが、ベンダーに問い合わせる前か後どちらでその目的を現場に共有するのがいいでしょうか?」。

清水さん
清水さん
聞いた後の方がいいのではないでしょうか。現場から質問があっても答えられないので。

1週間のお試しができることも多いので、そういうのを使うのも手ですよね。

清水さん
清水さん
インカムなど実物があるツールであればなおさらですよね。実物があれば、すぐに説明ができますからね。実物は強いです。

実物は大事ですよね。課題の共有は先でもいいのでしょうか?

清水さん
清水さん
そうですね。課題が共有されていないと、話も通じません。
課題は先に話しておいて、何のためにそのツールを導入するか、といった目的の部分は、ベンダーに問い合わせたり、実際に触ってみた後がいいのではないでしょうか。

信頼を得るために、いろんな会議に顔を出す

やっぱり現場の方の目線は、ベンダーと違うな、と感じています。
導入時にうまくいくパターン、いかないパターンも考えていきたいと思います。
先程、最初の相談のタイミングで、チームで面談に参加する法人はスムーズだというポイントもありました。

赤沼さん
赤沼さん
そうですね。経営側、管理職、現場のスタッフなど違う立ち位置の方が揃ったチームで相談に来てくれると、すごくスムーズですね。
介護記録に対して、いろいろなレイヤーの視点で聞きたい、という姿勢が伝わると、その先もうまくいくイメージはつきやすいです。

画面を見せたときに経営側の方から、「これで、現場のあの課題が解決できるね」といった具体的な発言があると、しっかり現場のことを理解したうえで、導入しようと検討していることが伝わります。

うまくいかないケースだとどうですか?

赤沼さん
赤沼さん
導入推進をする方と、現場の温度差が大きいとやっぱり途中で話が止まりやすいです。
「自分はケアコラボをいいと思っているから導入したい」と熱意は伝わるのですが、トップダウンで「導入する」というコミュニケーションだけを取っていると現場は付いてこれないので、どうしても頓挫してしまうケースがありますね。

温度差はベンダー側だと埋められないですよね…。コメントで、「兄貴/姉貴肌の人が推進者にいるといい」と来ていますが、わかりますね。

赤沼さん
赤沼さん
そうなんですよね。ケアコラボを「いい」と思ってくださっている方の、現場での信頼感もすごく大切だと感じています。
清水さんのように、楽しくやっていて、周りの人が興味を持つといった積み重ねがすごく大切なのかな、と。
清水さん
清水さん
現場に兄貴、姉貴がいるICT推進は最強ということですよね(笑)。
「あの兄貴が持ってきたツールなら、使ってみるか」「兄貴に聞けば答えてくれるし、ベンダーにも聞いてくれるか」みたいな関係性ですよね。
赤沼さん
赤沼さん
そういう方がいると、ベンダーからもコンタクト取りやすいですし、提案もしやすいですね。
清水さん
清水さん
私は、呼ばれてない会議にも全部出るようにしていました。介護スタッフ会議、経営会議…などなんでもです。
会議では、課題が話されているので、「お、この課題はkintoneで解決できるかも」と思ったら、誰にも言わずにすぐに機能を開発するんです。で、次の週に見せると、「そうそう、こういうのがほしかった」と言ってくれる。
赤沼さん
赤沼さん
へえ、すごい。
清水さん
清水さん
こういうことを繰り返していくと、現場の方もエンパワーメントされていくんです。「こうすれば、リハビリの効果が見える化するんじゃない?」「ここも変えられるんじゃない?」という発想が出てくるんですよ。
こうした変化は、私自身もすごいな、と感じたところです。これも、ソーシャルワーカーの役割ですよね。

ケアコラボをきっかけに、Zoomを使い始めたとかホームページ作りました、なんて声も多いですね。こういう声はすごくうれしいです。

どの現場も「必ず混沌する」と思っておいたほうがいい

清水さん
清水さん
そうですよね。それまでできなかったことも、できるようになったり、想定してなかったことに、チャレンジするようになったり…。
そういうのを目の当たりにするとやっててよかったと思いますね。

「できない」と決めつけないことも大切ですよね。

清水さん
清水さん
そうですね。あとは自分自身がどうやったら諦めないか、はよく考えますね。私みたいな立場だと、ちょっと先の未来が見えてるんです。
ICTツールを入れて、現場がどう変わるかが見えるから、がんばれる。そのゴールをベンダーと一緒に共有したいとは思いますね。
赤沼さん
赤沼さん
ゴールという意味では、私たちは、最初の2ヶ月の準備期間で大事にしてほしい4つのポイントを書いたシートをお渡ししています。
「その4つのポイントについて、みんなで話し合いながら使っていきましょう」と伝えるんです。
同時に、「最初は絶対に、現場が混沌とします」と率直にお伝えします。
この2ヶ月、なんとかそれを乗り越えましょう、とキックオフミーティングのような形でスタートしています。
清水さん
清水さん
それだけ言われると、落ち込んだりしませんか? そんなに大変なのかぁって。
赤沼さん
赤沼さん
そのときは全力でサポートしますとも言っています(笑)。一緒にがんばろう、という話も必ずしています。

どの法人さんも混沌とする、というのは知っておいてほしいですよね。

清水さん
清水さん
ベンダーさんが成功事例を出しているから、それを見ちゃうと「自分たちだけが失敗してるんじゃ?」と思っちゃうのもありますよね。

ああ、そうですね。失敗例は表に出せないですからね。

赤沼さん
赤沼さん
そういえば、相談いただくお客様から、失敗例を教えてほしいと言われることは多いですね。
清水さん
清水さん
失敗例は担当者に直接聞くしかないですもんね。

ピンチに備えて常に情報収集しておく

失敗例に絡んでコメントが来ています。「施設長は現場の課題を感じているのに、現場が気づいていない。本当は現場から気づいてほしい…」と。これはすごく同感できますね。

清水さん
清水さん
そういうときはピンチを待つしかないですよね。ピンチじゃないと現場も響かないので。
ベテラン職員が辞めちゃったり、残業が立て込んで疲弊していたり…。そういうタイミングだと課題に意識がいきやすいですよね。
赤沼さん
赤沼さん
現場がピンチになったときって新しいツールを入れるエネルギーってあるものなんでしょうか?
清水さん
清水さん
そのピンチがずっと続くほうが心が持たないですよね。
そういうときに、「こういうツールを入れると楽になりますよ」とすぐに言えるように、常に情報収集して仕込んでおくことがICT担当者には重要ですよね。

コメントでも、「なぜシステムを導入するのか、十分説明するのも大事ですよね」ときています。

清水さん
清水さん
そうです。“なぜ導入するのか”は、ピンチのときだとすごくわかりやすいんですよ。

「初期段階は利用する範囲を狭めるといった工夫も必要です」というコメントもあります。確かにそうですね。最初はバイタルだけ手書きを辞めよう、とかですね。

清水さん
清水さん
局所的に効果が出るのを周りが見ていると、訴求しやすいですよね。
「あの人が関わって、看護師さんが楽になってる。うちもやってくれないの?」と思ってもらいやすいですから。

成果がないと楽しくないですもんね。

ICT化の価値は効率化だけではない

清水さん
清水さん
「楽になったよ」と言われると、こっちも楽しいですからね。
それだけでなく、以前ある職員から「清水さんが開発してから、仕事が楽しくなったよ」とまで言ってもらえて。
楽にするだけでなく、楽しくさせることもできるんだ、と気づけてすごくうれしかったですね。

ICT化は効率化だけが見られがちですけど、それだけではないですよね。
職場の雰囲気がよくなったとか、仕事に対する姿勢が変わったりとか、そこが一番大事なんじゃないかと思います。

清水さん
清水さん
まさに、本当にそこがICTの価値ですよね。
赤沼さん
赤沼さん
ケアコラボにログインすることが楽しい、と言ってもらえたことはあります。
次はケアコラボでこういうことをやりたい、といった声を聞くこともありますね。
そこまでいくと、自走してくれているなと感じます。
清水さん
清水さん
効率化は数字で表せますけど、楽しいは数字にできないですからね。なかなか伝えるのは難しいですよね。
やっていることは、価値観の転換なんですよね。それまでなかった価値観に趣を置くシステム、といいますか。そこはいろいろなツールを使って感じています。

「ICT化して仕事している姿が格好良くなった」という声も届いてます。

清水さん
清水さん
スマートグラスとか普及したらもっと格好良くなりますよね(笑)。

「上長や現場への説得する材料をベンダーが用意してくれるとありがたい」というコメントもあります。これは、なかなか難しいラインですね。どこまで準備をするか。

清水さん
清水さん
上長には数字での説明が大切ですよね。一方で、現場には数字は響かない。
現場には残業時間を減らしたいのではなく、利用者さんや患者さんと向き合える時間を増やしたいといったメッセージを伝えないといけないですよね。

あと、最近すごく考えるのが、組織と組織がつながるようなベンダーさんがいてくれると助かるなーと思うんです。
コミュニケーションツールの導入がうまくいかない組織があったら、成功している組織に一緒に行ってくれる…とか。
そうやって、知識と知識をつなぎ合わせる形で課題を解決するベンダーさんがいてもいいのにな、と思います。
こちらも、多職種連携の基盤にもなりますし。

この協議会も、もっとうまく活用できるといいですね。協議会と地域でコラボするとか…。活用事例をもっとリアルに見れるようにするといいかもしれませんね。

あっという間に終わりの時間が近づいてきました。
最後に改めて、赤沼さんが思う、活用がうまくいくICT担当者のポイントをお聞きしたいです。

赤沼さん
赤沼さん
やっぱり、欲張らずに、「この課題は解決したい」という軸を持っていることが大事ですね。
あとは、清水さんがお話されていたように、常に情報を追っていること。
それから、ご自身が所属しているチームが「できない」と決めつけないことですね。
この3つがポイントになるのではないでしょうか。

ありがとうございます。では、最後に清水さんにも、ベンダーに求めることをお聞きしたいです。

清水さん
清水さん
先程の話にも通じますが、「つなげること」ですね。
現場と担当者、担当者とベンダー、組織と組織、介護業界と異業種…いろいろな“つなげること”に着目したベンダーさんがいらっしゃると可能性を感じます。

まだまだ話足りない気もしますが、お時間が来てしまいました。本日は以上となります。
福祉の現場、ベンダーそれぞれの視点で率直な意見が交わされた対談でした。お二人ともありがとうございました。

ABOUT ME
長瀬 光弘
フリーランスのエディター/ライター。取材記事の制作を強みとしながら、メディア運営やコンテンツディレクションなど幅広く活動中。得意テーマは「ITサービス/スタートアップ」や「組織づくり/働き方」など。自身の経験を福祉業界のICT化促進に活かすべく、「福祉の現場 ICT活用協議会」のコンテンツ制作に参画。2019年に東京からUターンし、現在は岐阜県在住。
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