ICT化の取り組み

イベントレポート「福祉の現場発! ICT推進の工夫と苦労」

2021年7月30日、福祉業界向けにICT活用のヒントを得る場として開催された「福祉×ICTのオンライン展示会」。
同イベントで、一際大盛況だったのが6人のICT推進担当者が体験談を語り合う座談会「福祉の現場発! ICT推進の工夫と苦労」でした。
今回特別に、その座談会の様子を全文書き起こしでレポートいたします。
現場の最前線にいるからこそ出てくるエピソードは、まさにICT化の工夫と苦労でいっぱい。
ぜひ、みなさんもICT化のヒントを得てください!

福祉の現場でICT化に取り組む6人が集結

みなさん、こんにちは。本日、司会を務めます岡部と申します。
今日は「福祉の現場発! ICT推進の工夫と苦労」と題しまして、6名の登壇者の方と共に座談会形式でお話を伺います。

まずは、私から簡単に自己紹介を。私はケア介護記録システム「ケアコラボ」に勤めながら、福祉の現場ICT活用協議会の理事も務めています。
みなさんと有意義な議論をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!

平野さん
平野さん
こんにちは、千葉県にある社会福祉法人福祉楽団の平野と申します。
福祉楽団においては、総務・人事部ICT推進担当という役職についており、ICT推進を専門とする立場にいます。
福祉施設では少し珍しい役割かとは思いますが、私の経験談が少しでもお役に立てば幸いです。
清水さん
清水さん
私は、埼玉県にある上青木中央医院で、医療相談員として働いている清水と申します。
福祉、介護の世界一筋で、SEの経験などはないのですが、ソーシャルワーカーの視点でICTについてお話ができればと思います。
濱口さん
濱口さん
濱口と申します。三重県の有限会社ウェルフェア三重が運営する、介護付有料老人ホーム「みなみいせ」の施設長を務めています。
非常に緊張していますが(笑)、がんばってお話していきたいと思います。
高山さん
高山さん
広島県にある社会福祉法人「ゼノ」少年牧場という障害者向けの法人が運営する、「ゼノ」Homeおおぞらで生活支援員を行っている高山です。
福祉業界は14年目になりますが、自分の仕事を効率化するために取り組んでいたことが、だんだんと施設や法人全体の効率化に広がってきました。
今日は、自分の体験談をお話できればと思います。
三津谷さん
三津谷さん
宮城県仙台市にある社会福祉法人ライフの学校で事務として働いている三津谷です。
事務員の中でもICTに詳しいということで、ICTに関連する業務も行っていますこういう場で話す機会がないので緊張していますが、しっかり話していきたいと思います。
岩田さん
岩田さん
岩田と申します。先ほど自己紹介があった平野と同じ、福祉楽団で働いています。
システムエンジニアとして働いた経験を活かし、福祉現場のICT化に取り組んでいます。
ガジェットや効率化が好きなので、便利なものや新しいものを面白がりながらやっています。よろしくお願いします。

「ピンチ」がICT化のきっかけに

ありがとうございます。では、さっそく最初のテーマ「ICT推進の工夫と苦労」から話していきたいと思います。

現場と関わってよく思うのが、ICT導入を目指す法人さんの中でもうまくいくところ、いかないところと分かれてくるなということです。
うまくいく法人さんの特徴として、みなさんのようなICTの担当者が、経営側と現場側をうまく繋ぐ役割を担ってくれている点があるのかな、と最近思います。

そんなみなさんに、まず聞きたいのが「どういうきっかけでICT化を進めることになったか?」という点です。平野さんいかがですか?

平野さん
平野さん
私自身、20年ほどシステムエンジニアとして働いていました。
その経験を福祉業界で活かしたいと思い、転職活動をしていたところICT化に力を入れている福祉楽団に入ることになりました。
ですので、ゼロイチで紙からデジタルへ、という経験はしておりませんが、すでに導入されているツールから新しいツールへの変更する難しさも絶賛経験中です。
少し、質問とずれてすみません。

ありがとうございます。ゼロイチとはまた違う視点での苦労もあるということですね。清水さんはいかがですか?

清水さん
清水さん
導入のきっかけは、一言で言うと「ピンチ」です。

在宅訪問診療の患者様が急増した事による事務作業の増大というピンチが1つ。
デイサービスにもICTのツールを入れたのですが、利用者の数が減るにつれてツール自体が規模に合わなくなってきたというピンチも経験しています。
これは、もうデイサービスがつぶれちゃう、というぐらいのピンチです。
あとは、ベテラン職員の退職が続くことによる病院の医事課のピンチ。

こうした大きなピンチが積み重なり、ICT化を本腰を入れて行うようになっていきました。

ピンチをチャンスに変えてきたわけですね。

清水さん
清水さん
チャンスに変えられないときもありますが(笑)。
こうした経営的なピンチは、ICTに高い意識を持つきっかけにはなると思います。

いい着眼点ですね。では、続いて濱口さんお願いします。

濱口さん
濱口さん
私たちの場合は、代表者が積極的にICTツールの導入を進めています。
ケアコラボやチャットツール「LINE WORKS」など、代表者が「いいツールがある」と話があって、導入がスタートしました。

順番で言うと、最初はLINE WORKSの導入から始まりました。それまでSkypeなどは使っていて、馴染まない点もあったのですが、LINE WORKSは有料版を使うということで本腰を入れるぞ、と。そこから少しずつICT化が進んでいるという形ですね。

そうした流れがあり、私自身はkintoneを使って介護施設の情報管理を進めています。紙ベースだと様々な業務情報を転記しなければならず大変です。それを、kintoneで一括で管理できるように四苦八苦しながらですが、進めています。

ありがとうございます。高山さんいかがですか?

高山さん
高山さん
私が今のグループホームに移った際に、管理者からICT化をしたいという話がありました。
そのときに、自分がこれまでやっていたことを共有したり、新たに情報を集めて、準備を進めていきました。
非営利団体向けに割安でソフトウェアを提供するサービス「TechSoup」を使うようにしたり、ケアコラボを導入したりして、紙やエクセルではなく専用のICTツールを使うように変化を進めています。

濱口さんも、高山さんもトップがICT化の指針を出し、しっかりとその声を受け止めて役割をまっとうしている点がすばらしいですね。三津谷さんどうですか?

三津谷さん
三津谷さん
我々も、最初は法人の代表の意向でケアコラボが導入されたのがICT化のきっかけです。
ケアコラボを使っている施設を見学したりして、みんなで導入を進めていきました。
それから、ビジネスアプリケーションの「Google WorkSpace」を最初は役員だけ限定で試す、ということを最初の頃にやっています。
実際にGoogle WorkSpaceを使ってみると、すごく便利で、紙ベースでの管理が減ってきているという状況です。
使いながら、他にもいろいろ便利な機能が見つかっているというパターンがGoogle WorkSpaceですね。

他にもいろいろなシステムを導入することがありますが、「課題に対してどういうソフトがあるかをリサーチし、実際に使って課題が解決でているかを検証する」というサイクルを繰り返しています。
その真っ最中、という感じですね。

役員限定でスモールスタートしてみる、というのはいいアプローチですね。では、岩田さんお願いします。

岩田さん
岩田さん
私も、福祉楽団がICT化を進めたいという求人を見て、応募したのがきっかけでした。
福祉事業は、報酬がある程度決まった中で、どこにお金を分配するかを考える難しさがあります。
業務効率やコストダウンを図ることはもちろんですが、ケアの質をどう上げるか、ということも重要な柱として、ICTを活用し、何を実現したいかが大切だと考えています。

オンプレミスか?クラウドか?

ICT化は時間の短縮ばかりに目がいきがちですが、ケアの質という部分も非常に重要ですよね。ありがとうございます。

今お話を聞いていて、みなさん、導入ハードルが少なく、スモールスタートがしやすいクラウドサービスを使っている印象を受けました。
一方、福祉業界ではまだオンプレミスのICTツールも多く、導入コストが課題にもなっています。
ICTツールを検討する中で、オンプレミスとクラウドの違いなどはどう感じていますか?

平野さん
平野さん
まず大前提として、オンプレミスかクラウドか以前に、そのツールが法人にとって効果的かどうかが最も重要だと考えています。
その上で、対災害を考えた場合、オンプレミスだと基盤的な脆弱性が大きいです。
千葉県では2019年に2週間以上停電となった地域もあります。
そういったBCPの観点では、クラウドを選択する場合が多いです。

ただ人数が増えてきた場合、クラウドとはいえスモールスタートが難しくもなる、と感じています。
その場合、例えば1人あたり月600円で試してみようと言っても、それなりの金額はかかってきます。
そうなると、買い切りという選択肢も捨てがたい。組織規模が大きくなるにつれて、クラウドサービスの難しさを感じているところです。

なるほど。規模の大きさによって、課題感も変わってきますね。清水さんはいかがですか?

清水さん
清水さん
現場の人たちからすれば、オンプレミスかクラウドかって専門的でよくわからないんですよね。
だから、私は「どこでどう使いたいか?」から検討を進めるようにしています。
「外でスマホで情報入力したい」という話があればクラウドだね、となります。
そういうアプローチで検討をしています。

クラウドの場合はオンプレミスと比べて、導入までのスピード感が違いますね。
オンプレミスは導入までのプロセスが多く、時間がかかります。
そうすると、現場が待てないんですよね。
クラウドであれば、トライアルで、実際に外でスマホで触ってみて「おお、入力できる」とすぐに体感できる。
そういう驚きがないと導入が進まないので、そうした利点がクラウドにはあるのかな、と思います。

なるほど、驚きというのはいい観点ですね。濱口さんいかがでしょうか?

濱口さん
濱口さん
正直、介護現場からするとどっちがどうとかはわからないですよね。
施設の中にいると違いはわからない。
変わっていても、半年、1年気付かずにいる人も普通にいると思います。

その中で、私個人の所感で言えばクラウドにすることで鞄で持ち運ぶ資料の量が圧倒的に減りましたね。
ノートパソコン一台あればいいので、場所を選ばず仕事ができるようになったのも大きいです。
急いで出さなければいけない書類もいちいち施設に戻らなくても、作業ができるのですごく楽になりました。

まさに、業務効率ですね。高山さんいかがですか?

高山さん
高山さん
我々の法人は歴史があるので、オンプレミス型のツールが多いです。
そこからクラウドツールも少しずつ使い始めていますが、やはり長く続けているツールからの変化は何か大きなきっかけがないとしづらいとは感じています。
外で仕事ができたり、デバイスの持ち運びがしやくなったりといったことを知ってもらうことで、コツコツと切り替えていくしかないのかな、と。
法人でも、業務効率化委員会を立ち上げて検討は進めているのですが、わかりやすさ、使いやすさをどう伝えるか、まさに今粘り強くやっているところです。

先ほど話しにあった「ピンチ」があったほうが変化はしやすいですよね。

高山さん
高山さん
そうですね。最近はコロナ禍で、リモートワークを余儀なくされたので、ビデオ会議アプリの「Google Meet」を各施設にアナウンスして使ってみたりと、ちょっとずつクラウドツールを試す機会もあります。
そうした機会にすぐにみなさんに使ってもらえるように準備をしておく、という意識も大切なのかな、と思います。

ありがとうございます。三津谷さんいかがでしょうか?

三津谷さん
三津谷さん
施設では、オンプレミスは一部まだ使っています。
ただ施設の数が増え、法人の規模が少しずつ大きくなるにつれて、クラウドにほぼほぼ移行しています。
例えば、今度小さな拠点が新しくできるのですが、そこに事務員を1人置くということは難しいわけですよね。
現場の人にやってもらうのも難しいので、クラウドで別の場所にいる事務員が主に管理して、現場の担当者と連携を取っていく形がよくなってきます。
一気にすべてをクラウドにというのは難しいですが、少しずつ移行している、という段階です。

事務員が置けないという話に、他のみなさんもうなずいていますね。BCPの観点からもお話を伺いたいです。

三津谷さん
三津谷さん
そうですね。現在はGoogle WorkSpaceをすべての職員が使えるようになっており、災害時にはチャットでどこでもやりとりができるようにしています。

なるほど。岩田さんいかがですか?

岩田さん
岩田さん
ほぼみなさんと同じ意見です。
少し違う視点でいうと、カスタマイズの幅がクラウドシステムの場合、調整が難しいことがあります。
ですので、現場の業務などをクラウドのシステム側に合わせることも一方では必要だと考えています。

部分導入か一斉導入、どちらがスムーズ?

なるほど。オンプレミス、クラウドに関する様々な視点がありましたね。非常に参考になります。
さて、視聴者から質問が届いているので、ぜひみなさんでディスカッションしたいと思います。
こちらの質問です。「新たにICTツールを導入する際、できる人から部分的に導入して広げていくか、問答無用で全体導入してしまうかどちらがよいのでしょうか?」。
はい、ICT化を進めるうえで必ず一度は通る疑問かと思いますが、みなさんいかがでしょうか。

清水さん
清水さん
私の場合、「できる人」ではなく、「困っている人」から導入していくという考えでいます。
例えば業務で逼迫して困っている、作業時間が長くて困っている、という人から巻き込んで、ツールの効果を実感してもらうようにしています。
その様子を周りの人も見ているので、「なんかあの人と絡むと仕事が楽になるのかな」といった目で見てもらえるようになりますよね。
そうした雰囲気づくりも1つのコツなのかな、と思います。

何か具体的なエピソードはありますか?

清水さん
清水さん
デイサービスの看護師さんが4時間ぐらいかけてバイタルの記録を転記していたんですね。
それをkintoneを使って1時間ぐらいで終わるようになったという事例はあります。

ただ、これだけ聞くといい話に聞けますが、実は看護師のみなさんからすれば突然私がツールを作ってしまったという感覚になり、反発を受けたんですね。
ここで欠けていたのは「みなさんと一緒に作る」という観点です。
困っているかどうかを聞きながら、一緒に改善していく姿勢も大切だとその失敗から学びました。

貴重な失敗談をしていただきありがとうございます。他のみなさんはいかがでしょうか?

濱口さん
濱口さん
質問の中で「できる人から」という表現がありましたが、そこが少し気になりました。
というのも、できる人から始めてしまうと、推進派、反対派で派閥みたいなものができてしまうリスクがあるんです。
特に、福祉業界は高齢化が進んでいます。できる人だけで進んでしまうと、かなりの確率で派閥ができてしまう。

じゃあ、どうすればいいかですが、最近ICT化を始めた施設で推進メンバーを「できる人3:できない人7」ぐらいの割合で集めたんですね。
これが、すごい面白いやり方だな、と。
なんなら、「1:9」でもいいぐらいかなとも思います。できる人は自ら進んでやっていただけるので(笑)。

面白い発想ですね。確かに、全員できる人ということはありませんからね。
できない人へのフォローというのはどうすればいいでしょうか?

三津谷さん
三津谷さん
我々はできる人、できない人という区分は設けてないです。
いついつ一斉開始する、ということを決めたら、役員から少しずつ現場まで広げていくように進めていきます。
説明などの根回しは丁寧にやりつつ、一斉にスタートする、というスタンスですね。

現場側には「わからないことがあったらリーダーに聞いてね」という形で、リーダーがしっかりと推進を行えるように準備も大切です。
もちろん、それでもできない人もいるのですが、どうしても対応が難しい場合はリーダーだけでなく、私も対応します。
一人ひとり違うので、そういった形で地道に対応するしかないですよね。

高山さん
高山さん
私たちのグループホームでは、夜勤者の方が年配の方が多いです。
そういった方たちに夜勤日誌を紙に書いてもらっていたのですが、データで残せるようにしようとスプレッドシートにタブレットで記入してもらうようにしました。
最初は戸惑いもありましたし、データを消してしまった、と言われたこともあります。
そういったときに、クラウドだから復元できますよ、と教えたり、入力が難しかったらスマホと同じ入力方法を教えてあげたり、手書きでの書き方を教えてあげたりと細かくフォローをしています。

そういったフォローをできる限り行って、安心感を持ちながら仕事をしてもらう必要があるのかな、と。
これに関しては、始めたら最後までずっと付き合う意識を持って続けていくのがいいのかな、と思います。

とことん寄り添うのは同じ組織の人間じゃないとできない

できる方法を教えてあげることで、安心感を与える、そしてそれを続けるというのは大きなポイントかもしれないですね。
困ったときのホットラインとしての担当者がいることが重要ですね。
福祉楽団さんは規模が大きいですが、導入時のフォローについてはどうですか?

平野さん
平野さん
清水さんや高山さんがおっしゃっていたように、とことん付き合うしかないですね。
私の中では、「できない人」ではなく「やらない人」ですね。
実際は、そんなに難しくはないことが多いんです。
そういったやらない人が、少しでもやる気を見せたら、そこを見逃さずにとことん使ってもらうようにアプローチしますね。
なんてことない日々の関係性をしっかり構築して、現場の人が相談してくれるような、寄り添える立ち位置にいることが大事だと思います。
清水さん
清水さん
今、寄り添うといういい言葉がありましたね。
そう、寄り添うって社内の人にしかできないんですよね。
ベンダーさんは、そこまでとことん付き合えないので。
そういう意味で、私たちのような存在がいる意味があるのかな、と思って日々活動しています。

私も、ケアコラボの導入相談に携わる身として今の話はすごく共感できます。
「ケアコラボさんがフォローしてくれるんですよね?」という受け身の法人さんだとうまくいかないケースが多いです。
「私たちでなんとか使ってみるんで、使い方だけ教えてください」というケースのほうが、圧倒的にうまく導入が進みますね。

岩田さん
岩田さん
私も、導入時よりも普段の関係性が大事かと思います。
ICTを導入する際にはトップダウンによる意思決定は必要です。
いざ導入となったときに、文句がゼロということはないと思います。
逆に文句も含めて、言いたいことを言い合えるような関係性を築いておくことが大事なのかなと思います。

リアルな話が多くてすばらしいですね。もうひとつ、質問がきています。
「kintoneを導入して3年経ちますが、アプリを作れる人間が私だけです。みんなでアプリを作っていくことが当たり前になる雰囲気にしていきたいのですが、どうすればいいでしょうか?」という質問です。
kintoneでもいいですし、他のツールでも似た悩みはあるかと思います。いかがでしょうか?

清水さん
清水さん
今、我々の組織には4人ぐらいアプリを作れる人がいます。
最初は私が作っていたのですが、すごく楽しそうにやっていたんですよね。
それは、単純に自分が好きだったってこともあります。
そういう姿を見て、「何やってるんですか?」と1人、また1人と興味を持つ人が増えていきました。

ワクワクやっている空気感は大事かもしれませんね。

平野さん
平野さん
それは、すごく大事ですよね。
kintoneだけでなく、どんな仕事でもそうだと思います。
私も基本は楽しくやっていますね。
いろいろ自分で、楽しみながらツール使ってみて、「ばれる」のを待つという感じです。
濱口さん
濱口さん
何を隠そう、私も今日集まったメンバーが楽しそうにkintoneを使っているのを見て、「やりたいです」と経営側に訴えた張本人です(笑)。
私も清水さんに動かされた1人です。
清水さん
清水さん
いいですね。あとは、きちんと経営層がICT推進の担当者を認めてあげることが大事ですよね。
しっかりと評価してあげる。
平野さん
平野さん
めちゃくちゃいいこと言いますね。
でも、難しいのはケア職と一緒で基本的には「事故が起きない」ことに対して評価がされることがほとんどなんですよね。
ICTは基盤なので、トラブルが起きないかどうか、が一番気にされる傾向にあります。
なので、現実的には評価基準に関してはまだまだ改善の余地があると思います。
福祉業界のみならず、社内のシステムエンジニアは評価が低いと私は考えています。

何も起きないことが当たり前ですからね。

濱口さん
濱口さん
kintoneに話を戻すと、まだまだ難しいツールだと思われてるかもしれないですね。
kintoneを専門とするベンダーさんもいるぐらいなので、専門家が扱うものだというイメージが強いのかもしれません。
清水さん
清水さん
「システムを作る」という発想はなかなかないですよね。
普通は「システムを買う」ですから。
濱口さん
濱口さん
そうですね。そのハードルはありますよね。
清水さん
清水さん
一回作ってみるとわかるんですけどね。
マウス動かすだけでできるんだって。
三津谷さん
三津谷さん
できる人を増やすという観点で、私が最近意識しているのが、相談されたときの答え方です。
何か聞かれたときに、何でも自分が代わりにやってしまうと、ずっと頼りっぱなしです。
そうではなく、「こうするとできるからやってみて」という教え方をするようにしているんです。
そうすれば、いずれ私に聞かなくてもある程度の課題なら解決できるようになるかもしれない。
清水さん
清水さん
それもめちゃくちゃ大事ですね。
できないことをできるようにしてあげる、そういうエンパワーメントする力が私たちにはあるんだって、思えばすごく素敵な仕事だと思いますよね。

ラボみたいにディープに話せる場があってもいい

ありがとうございます。ちょっと私からも、ぜひ聞きたいことがあります。
私たちは、「福祉の現場ICT活用協議会」の活動として、情報発信に力を入れています。
その中で「福祉×ICT」に求められる情報、どのような情報が必要か。
この観点でぜひ、みなさんのご意見を伺いたいです。

高山さん
高山さん
法人の導入プロセス、苦労や工夫などがなかなか表に出ないので、そういった情報があるといいですよね。
ツールの使い方はたくさんあるのですが、どう導入していったかは少ないですからね。

現場の悩みをアンケートでも取っているのですが、どういう軸で判断をすればいいかが難しいな…と。
そういうときの、他の法人がどうツールの導入を検討していったかを知れるといいのかな、と思います。

清水さん
清水さん
私は少し違う角度の話になりますが、福祉や医療業界のICT求人ってあまりないなと思っています。
そういう情報があれば、私たちが培ったスキルを他で活かせるのかな、と。
繋がりを作れる情報網のようなものがあるともっとICT化が広がっていくのかな、と思います。
濱口さん
濱口さん
福祉の現場ICT活用協議会のサイトにある「教えて掲示板」で言うと、1つの題材でスレッドが3~4ターンぐらいで終わることが多いですよね。
結論も出ないことも多くて、もったいないとは感じています。
例えば、インカムやコールセンサーなどをスマホで一元化するという話題は、定期的にあがっています。
これって本当に現場で悩むんですよね。やって失敗だったということもあります。
そういうテーマを、もっと深ぼっていく情報交換ができるといいのかな、と。
研究会、ラボみたいに、このテーマについて話し合おうぜ、みたいな。

そうですね。議論を活性化する場をもっと作っていけるといいかもしれませんね。ベンダーの情報ももっとオープンにしていっていいと思います。

岩田さん
岩田さん
福祉業界の法人だけでなくて、もっと業界を問わず、一般企業が実践しているICT事例も参考にしたらよいと思います。
ICT化は福祉に特化したツールだけでなく、バックオフィス系やコミュニケーション系などは、一般企業でも使っているツールがたくさんあります。
他の福祉施設でどう使っているかではなく、視野を広げて、使い方や導入のコツなどを調べることが大事だと思います。
一般企業のほうが先進的な場合も多いですからね。

確かに、業務が共通していることはありますよね。

岩田さん
岩田さん
共通する部分を見つけて、まねできないかを考えるのがいいですよね。

 

ありがとうございました。まだまだ話足りないというか、ずっとしゃべれるなと思っていますが(笑)、お時間ですので今日はここまでとしたいと思います。
非常に現場のリアルな話が飛び交ういい座談会だったかと思います。
今日、登壇していただいた方、そしてご視聴してくださった方みなさん、ICT化に日頃から真摯に取り組んでいらっしゃると思います。
今日は、ねぎらいの意味も込めて拍手で終わりたいと思います。本日はありがとうございました!

ABOUT ME
長瀬 光弘
フリーランスのエディター/ライター。取材記事の制作を強みとしながら、メディア運営やコンテンツディレクションなど幅広く活動中。得意テーマは「ITサービス/スタートアップ」や「組織づくり/働き方」など。自身の経験を福祉業界のICT化促進に活かすべく、「福祉の現場 ICT活用協議会」のコンテンツ制作に参画。2019年に東京からUターンし、現在は岐阜県在住。