ICT化の取り組み

「出来ることから、まず動いてみる」 ICT活用で業務効率化を進める高山さんの1歩とは

福祉の現場でICTを推進する人の経験をオープンにするシリーズ。
今回は、社会福祉法人で障がい者支援に従事し、法人内のICT活用推進にも精力的に携わっていらっしゃる高山さんにお話をうかがいました。
現場の空気をどう捉え、どのようにアクションを起こしていったのかについて教えていただきました。

社会福祉法人「ゼノ」少年牧場
高山 尚士さん
(介護福祉士/福祉の現場ICT活用協議会社員)

当たり前になっていた残業に危機感を覚えた

ー本日はよろしくお願いいたします。まずは、高山さんの今のお仕事内容を教えてください。

高山さん
高山さん
障がいのある方々への支援をしていて、今はグループホームで生活支援員をしています。
たとえば食事を作ったり、足りない物を一緒に買いに行ったりする直接的な支援や、困りごとに対して相談にのるといった間接的な支援などをしています。

ーICTの担当もされているのでしょうか?

高山さん
高山さん
同法人の異動先の事業所で、管理者から「ICT化を進めていきたい」と相談がありました。
それをきっかけに、現場の状況を見て業務の効率化に必要なことを管理者とも話し合いながら進めています。

ー元々、IT関係のお仕事をされていたのですか?

 

高山さん
高山さん
いえ、全然IT関係ではない分野から、福祉の仕事に就きました。
昔からパソコンを触るのは好きで、グラフィックをやりたくて高校生のとき親にMacを買ってもらったんです。
それ以降、買い替えをしながらずっとMac製品を愛用しています。

私物のiPadを職場に持ってきて会議で使い始めた頃に「変なやつがいる」と言われていたみたいです。
後々知らされましたが、嫌な気はしなかったです(笑)

 

ー昔から好きだったことが、福祉の現場で活きたんですね。

高山さん
高山さん
そうですね。最初は、持っている知識でなんとかやっていました。

私は障がいのある方と仕事をする通所系の事業所から福祉のキャリアをスタートしました。
今から14年程前で、当時は作業所と言われていました。
日中は利用者の方と作業を一緒に行い、終わったあとに同僚と仕事の話をしていて、気がついたら21時、22時になっていることが常態化していました。
このような仕事の仕方では続かないと危機感を覚えて、業務をどう効率化していけばいいかと考えたのがスタートでした。

自分の出来るところから進めていく

ー具体的に、どのように業務の効率化を進めていったのですか?

高山さん
高山さん
たとえば、事業所にせっかくパソコンがあっても、そこまでわざわざ行かないといけないので、少し時間があるときに使うには不便でした。
そこで、自分のパソコンを職場に持ってきて、隙間の時間や、使いたいときに使えるようにしました。

それから、会議で議事録を残す際、それまでは手書きでメモしたものを後からパソコンに打ち直していましたが、iPadでその場で打ち込む、ということをしていました。
まずは、自分の手の届く範囲からツールを使い始めました。

ー現在はどんなツールを使っていますか?

高山さん
高山さん
Techsoupに登録し、Google Workspaceを無料で利用しています。
具体的にはカレンダー、クラウドストレージ、メールを主に使っています。クラウドストレージだと利用者さんの様子を撮った写真をすぐに共有できてとても便利です。

また、支援記録で使っているケアコラボも、パソコン、スマートフォン、タブレット、使いやすいもので場所を問わず入力できます。

それから、会議の際にGIJIを使って、全体で会議録を確認しながら進めています。

使っているデバイスは、事業所全体でパソコンが3台、タブレット2台とスマートフォンが2台です。
外出時に外へ持って出たり、別の棟に持ち運んだりと、共有で使いたいときに使えます。

Techsoupとは、NPOや社会福祉法人向けにITツールを安価で提供する団体。
登録はかんたんなので、こちらの記事を参考にしながらぜひご活用ください。

Techsoupの登録方法

ー今のツールを使っている、導入の経緯を教えてください。

高山さん
高山さん
最初にお金をかけて何かツールを導入するよりも、まずはどういうものがあるのか試してみたいと考えていました。
Techsoupに登録することで無料で使えるものがあったり、料金を抑えて使えるものがある、というのがきっかけで導入を進めていきました。

ー他のツールと比較はしましたか?

高山さん
高山さん
最初にGoogle Workspaceを使い始めて、特に不都合がないのでそれ以降も継続して使っています。

導入の際に、以前から自分が使っているGoogleのサービスであればある程度職場でもフィットするだろうと見込みがついていたことも選んだ理由の1つですし、無料で使えるということも大きいです。

戸惑いは慣れるまで仕方ないと割り切る

ー導入までのプロセスは、どう踏んでいきましたか?

高山さん
高山さん
ツールを決めてから、会議で伝達し、困っていたり、質問された際に使い方を説明していきました。
新しいことに対して最初は現場の戸惑いもありましたが、ある程度慣れるまでは仕方ないことだと、管理者とも反応を共有していました。
とりあえず使ってみるとそれほど抵抗感はなく、ほとんどの職員が肯定的に受け止めて仕事をしていると思います。

ー全員が使いこなすまで、どれくらいの期間を要しましたか?

高山さん
高山さん
半年くらいかかったと思います。
今のグループホームの職員数は15名程で、調理をしている世話人や、夜勤専従の職員の記録はGoogleのスプレッドシートで夜勤日誌を作り、日中勤務する職員がその内容を確認した上で入力するようにしています。
情報共有しやすい形を考慮しながら取り組んでいます。

ー苦手意識が強い方へはどのようにフォローされましたか?

高山さん
高山さん
そういった場合でも、すべてが分からないという訳ではありません。
分からなくて止まってしまう部分を聞いて、それを1つ1つ解消するのを続けていくことだと思います。

今はスマートフォンに慣れている人が多いですが、文字の打ち方1つとっても人それぞれやりやすい方法があるので「絶対にこうしてください」というのではなくて、やりやすい方法を提示しつつ、聞きつつ、みなさんが気持ちよく働ける環境を整えることが大切ですね。

ICT化を進めるタイミングは今

ーICT担当としての業務内容はどのようなものですか?

高山さん
高山さん
今年度から、法人としてもICTを進めて業務効率化を行おうという「ICT/業務効率化委員会」が立ち上がり、委員として活動しています。
現状では各事業所ごとにバラバラで進められているため、統一することでスムーズになることも出てくるのではないかと考えています。

ーICTの担当者として重要なポイントはなんでしょうか?

高山さん
高山さん
1番は利用者の方々のために、ですね。
この法人が障がい者支援のためにあるということは、僕らは利用者の方々の生活を豊かにするために存在しています。

事務的な業務に追われて、本来時間を割くべき直接的な支援にマイナスの影響が働くこともある。
職員が疲弊して辞めてしまうのももったいない。
業務を効率化して、働きやすい環境を整えることが利用者の方々の生活にプラスになるのだと思います。

ーそのために、担当者として必要だと感じていることはなんですか?

高山さん
高山さん
「分からない」と言われたときに「私もわかりません」で終わらせないようにしています。
たとえ自分が分からなくても「出来ません」ではなくて、やってみる。
あんまり社交的な性格ではないんですが、頼られたら頑張ろうって思ってやっています(笑)

あとは、みんなが思っている「こうしたい」を集めて、行動に移していくことです。
「こういうのがあったらいいよね」という理想だけではなくて、検討しているものの担当者に聞くとか、ソフトを試してみるとか。
どうしても、そのまま何もしないほうが楽、と考えてしまいがちですが、今はその姿勢を考え直すべきタイミングであると思っています。

ーコロナ禍で、ICT化のスピードが上がったと感じますか?

高山さん
高山さん
感染症対策で気が抜けないシビアな状況の中、取り入れざるをえなかったタイミングでしたし、それで気づいたことも多かったのではないかと思います。
会議をGoogle Meetで行うために各施設にアカウントを作って実際に使ってもらうなど、ICT活用のタネがまけたかなと思っています。

話し合える関係性を築く

ー課題を見つけるための工夫や方法はありますか?

高山さん
高山さん
困っている人と話をしながら探っています。向こうから質問をしてくれることもありますし、こちらからも声をかけるようにしています。
自分の持っている情報は伝えますし、一緒にしっかりと考えて、解決やヒントが見つけられるようにしています。
そういった情報が集まると、別の機会で役立つヒントになることもありますしね。

困りごとがあると業務が滞ってしまうので、出来るだけその内容を発信して共有したり、困りごとに対しての働きかけが切れないようにしたりしてます。
福祉の支援についてではなく、ICTのことでばかり質問を受けるので、本業についての質問がほしい気持ちも少しあります(笑)

ー現場の雰囲気が肯定的ではないとき、どのように乗り越えましたか?

高山さん
高山さん
自主的に業務効率化を進めていた段階から、体感値として「絶対に効率化を進めたほうがいい」という思いがありました。
物事が新しく変わるときのしんどさはあっても、やり方や進め方が分からないところをフォローすれば問題ないと思っていました。
自分の知識がゼロだったらハードルは高かったと思いますが、元々自分が使って「便利だな」と思うものから導入していったので、そこに抵抗はなかったです。

今でも使い方が難しいと言う方はいますが、全員がいいと思うものを探すのは難しい。
それについても「困っている」ということを言ってもらえるので、「やらない」と言われるよりいいと思っています。
話し合える関係性が築けていることが大切ですね。

ー目的を共有するために行っている、具体的な取り組みはありますか?

高山さん
高山さん
法人全体でアンケートをとって、どういった業務で困っているかを全職員に投げかけ、それを元に取り組みを進めていこうとしています。
急に決定事項を伝えられるよりも、自分が困っていることを意見し、解決するために委員会があることを理解してもらえたらいいなと思います。

仲間とともに1歩を積み重ねる

ーICT協議会に参加してよかったことを教えてください。

高山さん
高山さん
ICT協議会サイトの掲示板で、コメントがいただけることです。
これまでにも何回かアドバイスをいただいて、法人の委員会で活かせていてありがたいです。
全国の、同じように取り組んでいる施設の話は参考になりますし、仲間がいる感覚でうれしいです。

ー最後に、ICT推進に悩む人にアドバイスがあればお願いします。

高山さん
高山さん
アドバイスというほどではありませんが、実は出来ることってたくさんあります。
資料を請求してみるとか、担当者の方に聞いてみるとか。
その1歩が、業務効率化を進めることになります。「高山さん詳しいよね」と言われたときに「知りません」と答えるのか、「調べてみます」と答えるのか、少しの差で進む道が違ってきます。
たとえ自分が知らないことだとしても、困っている人と話をすることはできるので、その1歩の積み重ねが大切になってくると思います。

インタビュー後の感想

ご自身が抱いた課題意識を、出来ることから取り組もうとされる行動力が非常に印象的でした。
たとえ分からないことがあっても、それを分からないとは言わず一緒に解決に向けて寄り添う姿勢は、ICT活用の推進に限らず、仕事のあらゆる場面で必要となることだと感じました。
お話の最後で、iPadのことだけで1時間話せる、と笑顔でおっしゃっていたので、そのような企画もおもしろそうだと感じました!
この記事を読んでいらっしゃる方々も、まず出来ることから1歩踏み出してみるためのヒントになることがあったのではないかと思います。

今後も福祉×ICTの最前線の人たちにインタビューしていきますので、楽しみにお待ちください!

 

ABOUT ME
古畑 佑奈
2011年社会福祉法人へ入職、特養の生活相談員や、訪問介護員、介護職員のマネジメントを経験。現場での知識や経験を生かして、福祉や介護業界に役立つ情報を発信したいという思いから、2020年より介護系ライターとしての活動を開始。社会福祉士・介護支援専門員。