群馬県知的障害者福祉協会の会員向けに、福祉の現場 ICT活用協議会がオンラインで実施した「ICT研修」。
好評を得たこの研修は、同福祉協会のメンバーと共に何度もすり合わせを行い準備を行っていきました。
今回、研修の企画を行った群馬県知的障害者福祉協会副会長の石戸悦史さんと社会福祉法人チハヤ会「はーとふるチハヤ」の福本昌彦さんに研修内容や設計のポイント、実施後の感想などを伺いました。
ICT化に向けて、研修を検討している方はぜひご参考にしてください。
「できることから始めてみようよ」を伝えたい
今回、群馬県知的障害者福祉協会が行ったICT研修が大変好評だったと伺っています。今日はどのような研修内容だったのか、どのような学びがあったのかなどお聞かせください。
では、さっそくですが、まずは今回の研修の概要を教えてください。
なるほど。まずは前提として知っておいた方がいい知識ですね。
私たち「はーとふるチハヤ」では、2年前にケアコラボを導入しており、どう導入したか、どう変化したかなどの経験談をお話しました。
今回の研修内容は事前に講師を担当する、当協議会の岡部とすり合わせをしながら考えていったそうですね。どのような点を意識して、研修内容を考えたのでしょうか?
というのも、ICTの重要性は理解しつつも、なかなか導入に踏み切れない福祉事業所が多いんですね。
そんな彼、彼女らが一歩踏み出すきっかけとなるような研修にしたい、と考えて岡部さんに相談しました。
無料の「Googleフォーム」を使って入力してもらう形にしていたので、管理も簡単でしたね。
そうですね(笑)。アンケート結果も鑑みながら、研修内容を考えていったんですね。
ただ、それだと一つひとつの話が中途半端になるかもしれないということで、岡部さんにICTに絞って話をしましょうと提案していただきました。
福本さんのような方が登壇して事例について話す、というのも研修としては珍しいですよね。
同じ協会に所属する事業所が、どうやってICT化を進めていったか、事例を知っていただくことは、まさに一歩踏み出す勇気になるのではないかと思い話をしました。
そうしたこともぜひ共有したかったので、研修の場で話ができてよかったですね。
ICT化によって「新たなアイデア」がどんどん生まれる
どのような事例だったのか、教えていただけますか? 研修のイメージがより抱きやすくなるのかな、と思います。
我々の事業所がICT化に踏み切ったのは、ケアコラボの導入がきっかけです。
それまでは活動記録をインストール型のシステムと紙で管理をしており、引き継ぎのための打ち合わせが必要など非効率な状態でした。
そうした状況を改善するために、情報をクラウド上で管理し、スマートフォンやタブレットなどで閲覧できるケアコラボを導入したのです。
ただ、導入もスムーズに進んだわけではありませんでした。
なぜでしょうか?
ただ、ケアコラボは無料体験ができたので、実際に職員や経営陣が使ってみたんです。
その結果、「これはよさそう」という反応を周囲からいただけました。
スマホを触ったことがない職員に対しても一緒に触ってみて、どれだけ便利になるかを丁寧に伝えました。
ある種、泥臭いやり方ですが、こうした一つひとつのアプローチがICT化には大切なのかな、と思います。
導入して変化はありましたか?
クラウド上で誰でも同じ情報を閲覧できるので、各々で情報を確認できるようになったからです。
紙だったら、1つの場所にしか情報が存在しませんが、ケアコラボならそれぞれの端末で確認ができる。
こうした情報共有の合理化によって、時間にも余裕が出るようになりました。
「もっとこういうケアができるといいんじゃないか」「こういうプロジェクトをやったらどうか」と、違うところに意識がいくようになったんです。
一人ひとりに対するケアの質も向上しているように感じます。
ICT化によって効率化はもちろん、利用者に対するケアの質も上がるというのは大切な視点ですよね。
例えば「おむすびプロジェクト」と言って福祉系の学校と共に人材育成を行うプロジェクトを行っています。
人材不足が叫ばれる中で、学校と手を組むことで福祉職の人材育成を行うことを目的としています。
それから、林業が盛んな土地柄を活かし、木材アートのプロジェクトも行っています。
端材を無料でいただいて、事業所の利用者が木材でアート制作を行うんです。
障害者とアートの関係はとても面白く、どんどん深めていきたい領域ですね。
新しい動きがどんどん生まれているんですね。
ICT化によって業務スタイルを変える経験が、そのような波及効果まで生むこともある。
チーム内のコミュニケーションもより円滑になっていて、「チーム力」も上がってきています。
ICT化は業務を効率化する以上のいい影響が、組織にあるということですよね。
参加者にICT化のメリットを知ってもらえたのでは、と思います。
ICT化の価値に気付く時間
体験談は非常に参考になりますからね。今回の研修を終えて、お二人の中での学びや気付きはありましたか?
何より、自分自身がICT化の価値を信じられなければ、進むものも進みませんから。
そういう意味で、ICT化がなぜ大事なのかを、再認識する機会になりました。
それから、他にも活用できそうなツールを知ることができたのもよかったです。
未だに紙で管理して、業務に追われる日々を過ごしていたら、今の私たちはない。
ここ数年の取り組みを振り返りながら、石戸と同じくICT化の価値に気付いていったように思います。
参加者の反応はいかがでしたか?
みなさんが、意欲的に聞いてくれていた証拠だと思います。
「スマホの故障は起きませんか?」「スマホを使っていて利用者さんは気にしないですか?」みたいな、気になるけどなかなか聞きづらいような質問もありました。
双方向的にコミュニケーションを取りながら進行できました。
これは、Zoomを使った利点でもあります。
そういう設計も、今回の研修のうまくいったポイントかな、と思います。
最後に、ICT研修をどのような人におすすめしたいですか?
もちろん、経営層やベテランの人が参加しても価値はあると思いますが、これからの事業所運営を担う若いリーダーこそ聞いておくべきなのかな、
と。おそらく、何かしら共通の悩みを抱えていると思いますから。
それから、看護師など職員の方も積極的に参加して、理解を深めていくといいと思いますね。
仕事が嫌になりかけている人が参加すれば、「いろいろ頑張っている事業所があるんだな」ということを知ることができる。
視野が開けて、未来に繋がるチャンスにもなると思うんです。
ICT化がテーマですが、自分自身がどうやって働いていくかを考えるきっかけにもなると思います。
私のように、いろいろともがきながらも前進している人がいるんだよ、ということを感じてほしいと思います。